高校生の時 16歳の頃の話だ
バイクの免許は取ったものの、新しいバイクなんて買える訳もない
それでも同級生同士、オンボロバイクでツーリングに行ったもんだ
原付で冬の富士山へ行くエネルギーは何処から出て来たのだろうか?
冬の富士、晴れていても雪で2合目までしか上れない
50ccのバイクだ、上りは20キロしか出やしない
安い民宿に一泊する
まだ酒も飲まない頃だ
朝方までバイクの話である
丸二日寝なくとも平気だった
翌日箱根に廻る
強羅から大涌谷へ
平日 冬の箱根に人は少ない
温泉タマゴを食べる 金のない高校生には高価なタマゴだ
「1個食べると寿命が7年伸びる」凄い謳い文句だ
「俺は21年伸びた」「俺は28年」・・・
4人で笑いながら何個も食べたのを覚えてる
それから3年後 20歳を待たずして4人のうち2人がこの世を去った
Sは環八で
Oは新宿の大ガードで
二人ともバイク事故だった
残ったYはバイクを降りた
俺は降りなかった
ツーリングへ行くたびに「もう生きて帰って来ないかも?」と考えながら出掛けていったのを思い出す
何年も経ったある日の事 俺は突然 中野にあるOの墓へ行った、帰りに家に行き お線香でも・・・と尋ねると Oのお母さんが驚いた顔で俺を見ている
今朝方夢にOが出てきて「今日あいつが来るから家に居てね」と言ったという ご主人に「いつまでバカな事言ってるんだ!」と言われながら出掛ける用事を取りやめて家に居たと言うのである。
もう何年も墓参りに行って無い
5月 俺の誕生日と2日違いのOの命日が近づくと思い出す
「おい 俺は事故っても無いのに片輪になっちまってバイクなんか乗れねーぞ」
そう言ってやるか?
「お前 そのまま乗ってて死なないようにそうなったんだぞ」
そう言われるか?
そうしたらこう言ってやるぞ
「俺の食った温泉タマゴは当たりだったよ」
言わなくても何処かで見てるだろうな
|