くろじいの小屋
COLUMN


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32  猿の惑星          2004. 5.02
 
 
 M病院からJ病院に転院して1年が過ぎた。
 
転院と言っても、研修医の女医さんが荷物を持ってくれて、その後にくっついて通路を通って行っただけ。
直線距離で約200メートル足らず。だがそこは車椅子に座りながらいつも眺めてはいたが、鉄条網に囲まれて普段は入ることは出来ない禁断の?空間・・・・・見るもの全てが新鮮に感じた。都内にもまだこんなに良い空間があるんだ〜と思ったものである。
 
リハビリ目的で入院を許可された訳だけど、最初の連絡ではもっと身体の自由が利かない状態との連絡がされていたらしく「担送」扱いの病室に案内された。
担送とは、担架を使わないと避難や移動が出来ないよ、という意味である。
結局想像以上に?動けると判断され、別の6人部屋へ1人!これが12月22日のコラム「不思議な話」後半「この部屋でないよね?」の場面になるのだ。
 
そして長らくお世話になった車椅子をあっさりと取り上げられる、全ての移動は杖をついて歩きとなった。いや〜最初はトイレに行くのも考えながら移動していく、歯磨きをするにもコップとブラシを持つと杖が使えない・・・・・大げさだけど本人はかなり真剣である。
 
リハビリテーションを簡単に大別すると、
歩行を中心とした理学療法 PT (Physical Therapy)
トイレの移動から着替え、利き手が駄目になったら利き手を変換させたり、腕などが中心となる作業療法 OT (Occupational Therapy)
会話を中心とした言語療法 ST (Speech Therapy)の三つとなる。
STは会話と言っても、食べ物を飲み込んだり出来ない場合もこの分野になるらしい。
くろじいは幸いSTは受けずに済んだ。
PTもOTも、くろじいみたいに半身マヒというよりも、欠損や切断などで手足が無い人も居るわけで、リハビリはそれぞれ複雑に絡み合っている。
 
さてM病院では週二回決まった日にシャワーを浴びさせてもらった、というよりも動物園に居るカバのように洗ってもらった!と言う方が正しい。しかしここでは勝手が違う。
転院してすぐその日はやって来た!
理学療法士、作業療法士が、くろじい1人で風呂に入れるかチェックすると言うのである。
M病院ではPT・OTとも男性セラピストだったがここは二人とも女性!更には担当のH看護婦まで加わって女3人で見てるから目の前で服脱いで風呂に入れ!って?・・・・・
最初は冗談かと思ったよ。
 
だけど恥ずかしいなんて言っていられない、服を脱ぐのも一苦労、転ばないようにこっちも必死、手すりに掴まり恐る恐る湯船に浸かる。
じっと観察?されながら素っ裸で懸命になっていると逆におかしくなってくる。
古い映画に「猿の惑星」というのがある、その中で主人公テイラー(チャールトン・ヘストン)が猿に取り囲まれてホースの水で洗われるシーンがあった、そんな感じだ。
でも3ヶ月もシャワーだけだったのでお湯に浸かる事がこの上なく気持ちいい!
人間恥ずかしいより気持ち良い方が遙かに優先するのである?
 
リハビリ棟には色々な人が居る、泣いてる人、がっかりして思い悩んでる人、だまって遠くを見つめてる人・・・・・・
色んな環境や背景があるのだろうが、今も何処かで毎日頑張ってる人が居るんだよ。
「良くなるよ」「大丈夫」って言ってあげたい。
 
物の本によると、人間は人として飛躍的に成長する場面が3カ所あるそうだ。
 
病気や怪我によって死を覚悟する経験をした時
最愛の人(家族など)を失った時
刑務所に入った時
 
幸い?刑務所にはまだ入った事は無いので想像に過ぎないが、きっとこの3つの場面に共通するのは「飾りの無い人間愛に触れる」からではないだろうか?
お互いを真正面から受け入れて、お互いの運命を認め合う時にこそ本当の人間らしさが生まれるのかもしれない。(それにしちゃ成長してないな〜)
 
あっ!でも最近刑務所は混んでいてなかなか入れないらしいよ!


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