くろじいの小屋
COLUMN


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56  白衣の戦士         2003.12.17
 
 え〜?また看護婦ネタかよ〜・・・そう言うなかれ。
くろじいが今こうやってるのも彼女達のファイトのおかげだと思ってるし、心から感謝してるんだよね。それに脳外科の患者で俺みたいな場合、最初は大変でも、その後はリハビリなどが中心になってくるので、彼女たちの手を煩わせないっていう事もあるんだよねぇ。
あっ!一度だけ「一人でベットから車椅子に移らない事」って言われてるのを無視し、見事に床に転がっちゃった。それを助けに来てくれたN看護婦と共に再度倒れて彼女の上に乗っちゃったっけ、へへへ。
あっ!そういえばナースステーションの前に居る時、いきなりY看護婦に脱脂綿を鼻に入れられた・・・鼻血が出ていたらしい。その頃まだ顔の感覚が無いからわからないんだよね〜
「いったい何考えてたの〜?」って言われたってぇ・・・・・ねぇ?
でも最初に体重を言い当ててた同じ人間とは思えない?ような患者の鏡となってお手伝いしたりするんだな。
 
 くろじいの場合は全ての記憶がナースステーションの中で始まってるんだよ。
「クロちゃんっておもしろいよね〜私の顔は覚えてる?でも名前はわからないよね?名字カッコいいでしょ!気に入ってるんだ」と言いながら名札を見せるN看護婦当時23歳。何故かナースステーションで彼女の隣に車椅子で座らされていたこの場面から記憶がハッキリしている。Nはイモから蝶にになったとT看護婦が言っていた(イモムシから蝶になったと言いたかったに違いない)が本当に同じ人物と思えないほど名札の写真はイモ(芋)だった。
彼女たちの手はまるでヤスリで擦ったようにザラザラで赤くなり、寝不足で目は腫れ顔色は悪く重労働を伺わせる。
ナースステーションに置いてある特大ザーネクリームの瓶の中は、まるで千手観音が手を入れた様に彼女たちの無数の指の跡で気持ち悪い事このうえない。ただそんなのつけても手のボロボロは治らない。
 
じいが病室に帰るのは睡眠&食事と面会人が来た時だけ、残りの時間の全てをナースステーションで過ごしたようなものだ。他の病棟にも出張したが・・・
え〜?変態だって〜まぁ婦長より遙かに長くナースステーションに居るので、誰が寝ないで遊んでいたか、スノボで足を捻挫してるのを黙ってるか、化粧乗りが悪いか等々細かい事に関してはじいが一番知っていたに違いない。やっぱ変態か?
ぼーっとしてた訳じゃ無いよ、使い捨ての注射針のロールを一本一本に分けてサイズごとに箱に入れたり、点滴用のテープをカットしたり。おしぼりを巻いて蒸し器にいれたり・・・やることは探せばいくらでもある。テープをカットするハサミは彼女たちの誰かから借りるのだけど、若い看護婦の物ほど新しく切れ味が良い。最後の頃には目を開けなくてもその切れ味で誰のハサミだかわかった位だ。
 
 くろじいが居た病棟は外科病棟、脳外科病棟がいっぱいで外科に居候してたんだけど周りの患者はガンだらけ。抗ガン剤を使うと苦しいらしく、昨日まで元気に話していた人が口をきくのも辛そう・・・・・女性は髪の毛が抜け、朝枕についた大量の自分の髪の毛を見るのが怖いと話す。ナースステーションで作業してるじいの横でガンである事を告知される家族・・・聞いて聞かないふりををするんだけど聞いていて辛い。(本当は聞いちゃいけないんだろうけど仕方ない)だけど世の中ガンだらけだよ!俺の父親も肝臓ガンで亡くなったけど、ガンは日本人の全ての死因の3分の1を越えたらしい。石を投げればガンに当たるとは失礼だけどこれ本当の話。それも消化器系のガン、特に大腸ガンの増え方は相当なものらしい、全て食生活に起因してると思うんだよねぇ・・・。
 
以前、俳優の石坂浩二氏が大腸ガンで水戸黄門を降板し、癖の悪いスポーツ新聞が「水戸黄門、人工肛門」などと面白おかしく書き立てていた。同じ病室にも人工肛門のレクチャーを受ける人が多く、それを見ていると「な〜んだ俺なんか身体半分が動かないだけじゃん、ツイテルじゃん」と思ってしまう。そう思える自分の適当さ?が幸いしあまりグダグダと悩んだり落ち込んだりしないで済んだことも確かだった。
 
 話は逸れたが、患者の汚物を洗い(俺も最初は全部やってもらってたみたい、前もつまんで洗われた・・しらな〜い)、患部の処置をし、食事を運び、入浴させる(じいは週2回お風呂に入れてもらった、恥ずかしいのは最初だけ、慣れとは恐ろしい)彼女たちの痛々しい手は魔法の手である。
 
ある2月の夜のこと入院中一度だけナースコールを押した事がある。顔面が痺れてきて、まるで倒れた時と同じような感覚になったんだ。
飛んで来てくれたのは、汚物流しのような所でゴシゴシ顔を洗い「女捨てるなよ〜」と俺に言われて初めて化粧してきたW看護婦。特大の懐中電灯で目を照らし(脳に異常が起こるとどう孔が変化するんだって後から聞いた)「大丈夫だからね」と額に手を当てる。
たったそれだけの事なんだけど、すごく安心して落ち着くものなんだよね。
「大丈夫だからね」と何気なく言ったW看護婦の言葉、それは薬なんかより遙かに力を持っている。
わがままな患者や乱暴な患者にイヤな顔ひとつせず(裏で怒ってるのは知ってるけど)
24時間働き続ける彼女達は、白衣の天使じゃなく白衣の戦士なんだよ。
この前久しぶりに行ったら「痩せてる〜毛が生えてる〜」しか言わないんだもんな、毛ぐらい生えるぞ!まぁずっとこの頭だったからね。
 
ガンバレ白衣の戦士、みんなみんな本当にありがとう!
 
             この素晴らしい髪型の上にマウスを置いてね!



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